阪神タイガース「星野監督」のブランド戦略2

2003/9/10

巨人は、清原、江藤、工藤、ペタジーニといった他球団の主力選手を獲得し、
着実に戦力を強化してきた。
にもかかわらず、阪神は戦力の補強を怠ってきた。
これでは長年Bクラスに低迷するのもあたりまえ。
そう考えた星野監督は、昨シーズンのオフから今年の開幕までに、大胆なリストラとトレードを行い、
広島の金本、メジャー帰りの伊良部、日本ハムの下柳といった新戦力を獲得しました。
その甲斐あって、タイガース優勝のXデーが迫りつつあります。

ここで不思議に思うのは、選手の顔ぶれが大幅に変わったにもかかわらず、
なぜ、阪神ファンは、以前と変わらず熱狂的に応援しつづけられるのか、ということです。
今年の阪神は優勝が狙えるほど強くなったわけですから、当然ファンは盛り上がります。
しかし、いくら強くなるためとはいえ、選手の顔ぶれがこれほど一気に変われば、
タイガースらしさが薄れ、ファンがシラけてもおかしくありません。
ところが、阪神ファンはまったくシラけていません。

どうしてなんでしょう。
それは星野監督が、戦力強化に力をいれる一方で、
タイガースらしさ(ブランドアイデンティティ)をどうキープしていくか、
そのコントロールを実にたくみにやってのけたからです。

コーチ陣では、元・巨人の西本、元・広島の達川を招きいれながら、
バッティングコーチに阪神の象徴的存在である田淵を置き、心理面で阪神ファンの心をとらえました。

選手では、主砲級の金本をあえて3番に置いて、打の主軸となる4番には生え抜きの濱中を。
そして、投手陣の柱となる開幕投手には、これまた生え抜きの井川を指名しました。

これは単なる偶然ではありません。
星野監督がそれを意図的にやっていることが判明したのは、
濱中が故障して戦線から離脱したときでした。
濱中の変わりに4番を打ったのは、今年、外野から不慣れなファーストにコンバートされ、
打率が落ち込んでいた桧山でした。
実績からみて、金本(元広島)、アリアス(元オリックス)といった4番候補がいたにもかかわらず、
星野監督は生え抜きにこだわり、桧山を4番に指名したのです
(その後、桧山が故障してからは金本、八木、片岡などが4番を打ち状況は変わりました)。

阪神の星野監督がとったこの戦略は、これまでの巨人の戦略とは対照的です。
巨人は、落合にはじまり、清原、江藤、ペタジーニと他球団から獲得した選手を4番に置いてきました。
それがいとも簡単にできた理由としては、原監督も、前任の長嶋監督も、ともに巨人の生え抜きで、
監督の存在そのものが「巨人らしさ」を象徴してきたからではないかと思われます。

両チームの違いを図式化すれば、こうなります。

・阪神
星野監督=元中日の選手・監督
そこで
濱中・桧山=生え抜きを4番に置いて、阪神らしさをキープ

・巨人
原監督・長嶋監督=巨人の生え抜き
だから
西武の清原、ヤクルトのペタジーニを4番に置いても、巨人らしさは損なわれない

さて、この両チームの違いを、ブランド戦略の観点から評価してみましょう。
阪神、巨人のどちらの戦略が、よりファン(顧客)の心をとらえ、
ブランド(球団)への感情移入を起させるでしょう?
プロ野球の主役はあくまでグランド上でプレーする選手であって、監督は脇役であるとするなら、
阪神の方が戦略的に優れていると言えそうです。

「阪神には10人目のプレーヤーがいる」と言わしめるほどファンを熱狂させる
この星野監督のブランド戦略、興味深いことに、日産のブランド戦略とかなり似ているところがあります。
最後にその共通点を図式化して終わりたいと思います。

日産のカルロス・ゴーン社長は企業再生のために外部から招かれた
=星野監督も中日から招かれた

業績を回復させるために、ゴーン社長は大胆なリストラを行い、
外部から優秀な人材(デザイン本部長の中村史郎氏など)を招き入れた
=優勝のために星野監督も、選手、コーチの顔ぶれを大胆に入れ替えた

その一方でゴーン社長は、ブランドらしさを損なわないよう、
日産の象徴的存在であるフェアレディZに着目し、みごとそれを復活させ、往年のファンの心をとらえた
=星野監督も投打のかなめに生え抜きの選手を置き、ファンを熱狂させた

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ブランディング・コーチ 矢沢大輔
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