TUMI(トゥミ)のブランディング

2002/9/6

電車通勤をしていると、「TUMI」のバッグをもつビジネスマンをよく見かけます。
「TUMI」はアメリカのバッグメーカーですが、ここ数年で日本での売上を伸ばし、
銀座や丸の内に路面店を構えるようになりました。
お店を覗くと、何百種類ものビジネスバッグや旅行用のバッグが並んでいます。
私の目からは、どのバッグのデザインも何の変哲もないありきたりなものにしか見えないのですが、
プライスは、それに反してかなりお高めです。

なのに、なぜ「TUMI」は売れるのでしょうか?

それは「防弾チョッキの素材」でつくられているからです。
バッグを買うとき、耐久性を重視して選ぶ人に、この「防弾チョッキ」という言葉は効きます。
ここで仮に「このバッグは耐久性にすぐれたバリスティックナイロンでつくられていまして・・・」と
説明していたら、おそらく「TUMI」はこれほど売れなかったでしょう。
バリスティックという名前からは、どれほどの耐久性を備えている素材なのか、
普通の人にはまったく想像がつかないからです。

極端な話、素材名なんて何だっていいんですね。
重要なのは、その意味合いと説明の仕方。
「防弾チョッキの素材」と一言いうだけで、お客はその言葉からイメージを膨らませ、
「耐久性にすぐれている」なんていわなくても、かってに耐久性の凄さを了解してくれるわけです。
「防弾チョッキの素材でできた旅行バッグなら、
空港で少々手荒に荷物を取り扱われても大丈夫だな」とかってに想像してくれるわけです。

耐久性にすぐれていることを売りにしたいなら、このように「耐久性にすぐれている」といわずに、
いかに耐久性の凄さを伝えられるか、ここがポイントになってくるのです。

そして、説明の仕方がポイントになるということは、
ここでもう一つ、重要なポイントが浮かびあがってきます。
それは、説明をわかりやすくするためには、必ずしもゼロから新素材を開発する必要はないということ。
どういうことかというと、耐久性のすぐれたバッグをつくるために、
たとえば「東レ」のような素材メーカーと組んで新素材を開発しようなんて、
つい考えてしまうところなのですが、「説明のわかりやすさ」という観点からすると、
これは逆効果なんですね。
だってそうでしょ。
今までになかったものをゼロからつくりだすわけですから、
それを説明するには、図解や実証データをまじえる必要性なども生じ、もの凄く骨が折れるわけです。

つまり、いろんな努力をしてわざわざ新素材を開発しても、その特徴を一言で言い尽くせなくなるため、
なかなかお客に理解されず、労力の無駄に終わる可能性が増すのです。

重要なのは、ゼロからつくりあげる「創造力」より、むしろ「編集力」の方でしょう。

丈夫なバッグをつくろう。
そう思ったら、他の分野に使われている素材で、何かバッグとして使えるものはないだろうか?
と考えたほうが、ブランディングを行ううえでは有利に働くのです。

「TUMI」の利口な点を、もうひとつ紹介しましょう。
「TUMI」の旅行バッグについているキャスターは、インラインスケート(ローラーブレード)のタイヤ。
ほらほら、もうこの一言で、いかにスムーズに移動できるかが目に浮かぶでしょ。

最後に、もう一つ、内輪話を披露して締めくくります。
何年か前に、私の家族がプラダの大きなスポーツバッグを買ってきました。
何の変哲もないナイロン製のスポーツバッグだったのですが、
値段を尋ねると、確か5万だとか6万だとかいったので、
「そんなスポーツバッグなら、普通のカバン屋さんに行けば同じようなものが数千円で買えるだろう。
ただプラダのマークがついているだけじゃないか」と私は少々憤慨してしまいました。
すると家族は一言、こういったのです。

「でも、このバッグ、パラシュートの素材でできているんだよ」。

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ブランディング・コーチ 矢沢大輔
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