ブランディングのための「驚き」のつくり方2

2002/8/7

技術やサービスのレベルが一定ラインをクリアしてしまった成熟化社会で、これからどのようにして新たな驚きを生みだしていけばいいのか。

その一つ目の方法は、技術やサービスの向上によってもたらされる「良い」「悪い」という相対的な価値ではなく、「好き」「嫌い」という嗜好性の価値によって、驚きをつくってみてはどうかというものです。

製造業でいえば、少し古くなりますが、iMacの事例がこれに当てはまります。
アップルコンピューターが製造しているMacは、画像処理の用途に特化したコンピューターで、デザイン関連業界の中では、圧倒的なシェアを誇っています。
しかし、コンピューター市場全体でみると、一般的な事務処理に向くWINDOWSのシェアが圧倒的多数を占め、Macのシェアはわずか5%たらず。
バージョンアップを重ねて、画像の処理能力をあげても、アップルコンピューターはそれほど大きな驚きを生めなくなり、iMac発売直前まで、苦境に追い込まれていました。

そこでアップルコンピューターは、何を考えたか?
前述のとおり、Macはもともとデザイン関連の人々から支持を得ていたのですが、その外観のデザインにおいては、特筆すべき特長をもっていませんでした。
つまり、Macはコンピューターの性能の面ではターゲットであるデザイン関連の人々のニーズを満たしていたものの、嗜好性にかかわるデザインの面では、ターゲットに対して驚きを提供し切れていなかったわけです。
そこで、これまでのコンピューターの常識を覆す、スケルトンボディー(内部が透けて見えるボディー)に、カラーバリエーションも豊富に揃えiMacを登場させたわけです。
すると、何が起こったか?
なんと、デザインの仕事とは関係のない一般のOLや学生から、「こういうコンピューターなら、インテリアとしても部屋に置きたい」と指示されるようになったのです。
これをきっかけにMacは復活を遂げます。
このように嗜好性を高めることで、そこに強い共感を覚える人々がターゲット層以外からも見つかり、新たな顧客獲得の可能性が広がるのです。

もう一つ、サービス業の例もあげておきます。
「またか」といわれそうですが、スターバックスです。
スターバックスが取り扱っているのは嗜好品の代表ともいえるコーヒーそのものです。
もともと「コーヒーが好きだ」という嗜好性をもつ人々を対象にしているわけですから、その嗜好性を満たす方向で、コーヒーの品質以外の面、空間やサービスなどの質も徹底的に研ぎ澄ましていけばいいわけです。

コーヒーを飲む最高の環境を提供するには、タバコの煙は邪魔。
そう考えたスターバックスは全席禁煙にしました。

コーヒーを飲むときにふさわしいBGMとは?
そう考えたスターバックスは、音楽にこだわるだけでなく、実際にオリジナルのCDをつくり、店頭で販売しています。

また、先日、スターバックスでこんな光景を目にしました。
メニューを見て「コーラはないの?」というお客に対し、店員はこう答えました。
「うちはコーヒー屋ですので、コーラは置いていません」。

もうお気づきかと思いますが、徹底的に嗜好性を高めていくと、一部のお客を拒否することになります。
「うちは心底コーヒー好きの人々に来てもらいたい。
だから喫煙者は来てもらわなくていい。
コーラを飲みたい人は他の店でどうぞ」と宣言しているようなものですから。

しかし、ここに大きなポイントがあるのです。
通常の考え方をすれば、喫煙者にも来店してもらったほうがお客が増えるじゃないか、コーラも揃えておいたほうが、コーラが飲みたいというお客の希望にこたえられるじゃないかとつい思ってしまうわけです。
でも、そこに落とし穴があるんですね。
そんな喫茶店は日本中どこにでもあって、何の驚きもなく、到底ブランドにはなれません。

確かに、嗜好性を高めれば、ある一部のお客を拒否することになります。
しかし、喫煙者をシャットアウトすることによって、スターバックスの店内はいつもコーヒー豆の香りに包まれ、コーヒー好きのお客から絶大な支持を得ることに成功しているわけです。

iMac、スターバックスのどちらにも共通していえるのは、めざすべき嗜好性を明確に規定していること。
これによって、おなじ嗜好性をもつ人々が引き寄せられ、熱烈なファンと化していく。
このブランド構築のプロセスは、ガンコ親父のいる店に、そのこだわりを指示する常連客が集まってくる構図とまったく同じです。
「類は友を呼ぶ」といいますが、友を呼びためには、まず自らの嗜好性を具体的なカタチにして表明する必要があると、結論的にいえる気がします。

ブランド構築のための「驚き」をつくるもう一つの方法については、また次回で。
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ブランディング・コーチ 矢沢大輔
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