「不景気だから売れない」という言葉の罠

2002/8/6

先日、このサイトの開設を、知り合いの方々にメールでお知らせしたところ、大日本印刷の志村さんから、「ブランドの秘密の解剖、楽しみにしております」という返信をいただきました。
ブランドの秘密の解剖か、うーむ、これは驚きがあって、けっこうソソられる語感だなぁ。
よっしゃ、このコピーいただき!
というわけで、本日からサイトのタイトルを「ブランドの秘密」解剖ファイルに変更させていただきます。
志村さん、サイトの名付け親になっていただき、本当にありがとうございます。

さて、今回は「不景気」をテーマにお話したいと思います。
「不景気だからモノが売れない」という人がいます。
「不景気」→だから→「モノが売れない」
この考えは一見正しいように思えますが、実は間違っています。

「不況だ」「デフレだ」とマスコミが騒ぎたてても、売れるモノは売れています。
前述したスターバックスはその典型。
他のコーヒーショップより高い価格でコーヒーを売っていながら、多くのお客を集め店舗数も増やしつづけています。
ですから、「不景気だからモノが売れない」のではなく、「モノが売れないから、不景気になった」のです。

では、モノが売れない本当の理由は何なのか?
それは、多くのモノに驚きがないからです。
人間は驚きたがっているのに、多くの企業がその期待に応えきれないでいる。
こういう状況の中で、スターバックスは消費者に多様な驚きを提供しているわけですから、一人勝ちするのも当然なわけです(そっくりさんのタリーズコーヒーも健闘しているようですが)。

では、なぜ多くの企業は驚きを提供できないのでしょう?
それは、人が本質的に求めているのは、物質そのものではなく、モノから派生する驚きのほうであることを、多くの企業が見過ごしているからではないでしょうか。

ソニー元会長、盛田昭夫さんの著書「MADE IN JAPAN」に、こんな一節があります。
松下氏(松下幸之助)は以前、私と話していて「うちには、ソニーという研究所が東京にありましてなあ、ハッハッハッ」と笑ったことがある。
「ソニーさんがね、何か新しいものやってね、こらええなとなったら、われわれはそれからやりゃあいい」と言う。
あの徹底した商売の精神は私は偉いと思う。

盛田さんは多少の皮肉をこめて「偉い」と表現していますが、実はこの高度経済成長期の頃から、日本の多くの企業が松下とおなじような発想に陥り、自ら驚きを生みだす気概を失いはじめたのではないかと、私には思えるのです。
そして、モノをつくれば、それが飛ぶように売れたこの時代に、多くの企業が驚きではなくモノ自体に価値があると勘違いしてしまったのではないか・・・と。

ところが、そんなモノ不足の時代はいつしか終わり、反対にモノ余りの時代になってしまったのです。
もうこうなると、驚きのないモノは売れません。
にもかかわらず、多くの企業がいまだに他社と似たり寄ったりのモノを生産しつづけ、景気が回復すれば、また売れ出すだろうと期待を寄せている。

繰り返しますが、人が求めているのは、モノではなく驚きです。
いま、モノが売れないのは、そこから派生する「驚き」が欠けているからです。
それを不景気のせいにしていたら、もうその思考回路は、「責任転嫁」「問題の先送り」「思考停止」以外の何ものでもありません。
この先、一刻も早く、各企業が「驚き」を創造するという原点に立ち戻り、「ブランド」重視の経営を進めていかない限り、景気回復の兆しも見えてこないだろうと私は思っています。

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ブランディング・コーチ 矢沢大輔
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