ブランド価値は、驚きの数に比例する

2002/7

前回、スターバックスのアイスコーヒーが250円で、ドトールは180円、ベローチェなら割引券を使うと110円で飲めるという話をしました。 
おなじセルフサービスのコーヒーショップなのに、どうしてこんなにも値段に差ができるのか?

「それはブランド価値の差だよ」という人がいます。
では、そのブランド価値って何なの?
「それは、そのブランドが秘めているブランド力によって生まれる価値さ」。

これじゃあ、話が堂堂巡りです。
そこで、私は、断言したいわけです。
「ブランド価値は、驚きの数に比例する」と。
スターバックスがベローチェよりも140円高い理由は、「驚きの数の違いです」といいたいわけです。

どうですか。
これなら、いたって単純明解な話でしょ。
人は、驚きも、感動もないものに、高いお金なんて支払いたくはない。
ただそれだけの話です。

ここに、スターバックスから得られる驚きを、思いつくままに挙げてみましょう。

驚き1:全席禁煙(ドトールは、タバコの煙でいつもモクモク)。
驚き2:レジで注文してから、商品が出てくるまで、けっこう待たされる(それだけ手間隙かけて作っている証拠?)。
驚き3:フラペチーノ(フローズン状のこんなコーヒードリンクはスターバックスができるまでなかった)。
驚き4:ミルクをノンファット(無脂肪)に変えるなど、細かい注文を聞いてくれる。
このまえ、フラペチーノ硬めで! と注文する人を見た。
驚き5:バリスタ(コーヒーを入れるプロを「バリスタ」と呼ぶなんて、スターバックスで初めて知った)。
驚き6:私がよく通っている銀座マロニエ店には、ホテルのラウンジにあるようなソファが置かれ、定期的にジャズのライブ演奏が開催される。
驚き7:専用の容器を買って持参すると、コーヒーの値段が割引かれる(割引の発想がエコっぽい)。
驚き8:テイクアウトといっても、袋に入れてくれない(これもエコっぽい)。
驚き9:子供専用の低価格なジュースがある。

まだまだありますが、このへんにしておきます。
スターバックスはこのようないろんな驚きを私たちに提供してくれているんですね。

そこで、驚いた私たちの脳内で、何がおこるかというと、驚きのひとつひとつが脳内にある引出しに収納されていくわけです。
そして、驚きの数が一定量を超えると、引出しの前面に他の引出しと区別するためにラベルが貼られます。
「STARBUCKS」と記されたラベルが。
これがブランドイメージといわれるものです。
こうしてブランドイメージが確立されると、街でスターバックスの看板を目にするたびに、もう条件反射的に脳内の引出しが開いてしまいます。
そして、引出しの中の驚きの数が多ければ多いほど、多様であればあるほど、それを求めて、またその店に入ってしまう、というわけです。

スターバックスに行けば、アイスコーヒーに250円を払っても、それに見合うだけの驚きを用意してくれている。
それに比べると、エクセルシオールにはおなじ250円を払っても、それほどの驚きが得られない。
ようするに、「驚きの数」と「値段」が釣り合っていない。
だからエクセルシオールには空席ができるのです。

コーヒーショップの話しばかりではなんなので、ソニーの話もしておきましょう。
ソニーが他のメーカーの商品より、高い値段で売れるのは、驚きのある商品を作りつづけてきたからです。
小型のトランジスターラジオに、トリニトロン、ウォークマンに、ベータ(これはVHSにやられてしまいましたが)、パスポートサイズの8ミリビデオカメラに、MDに、アイボに、バイオと、驚きのある商品ばかりを世に送り出してきました。
こうした連続性によって、人々の頭の中にソニーのブランドイメージができあがり、「SONY」の文字を見ると、その商品の値段が少々高くても財布の紐をゆるめてしまう。
どうです、スターバックスとまったく同じ構造でしょ。

というわけで、1つや2つの驚きを提供するくらいでは、ブランドにはなれないわけです。
偉大なブランドとは、絶え間なく驚きを生みだそうとする企業努力の結果としてできるものであって、あらかじめブランドになるための秘訣やトリックといったものが存在するわけではないのです。

じゃあ、おまえのいうブランド戦略って何なんだ?
とそろそろツッコミが入りそうですね。

私がこれからお話していくブランド戦略とは、「ラクしてブランドになる方法はない」という現実をうけとめながら、それでもなおブランドを目指して発展していきたいと願う企業の方々に、ぜひ実践していただきたい戦略なのです。

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ブランディング・コーチ 矢沢大輔
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